住宅断熱DIY向きの断熱材を考える-基礎知識編

DIY

家を暖かく or 涼しく保ちたい

燃料・電気価格高騰対策やそもそも夏冬は快適ではない性能の住宅に住んでいるなど理由はさておき、今住んでいる家をもっと暖かく、もしくは涼しくできないものかと考える人は多いもの。
そして、昨今のDIYブーム。
情報はいくらでもあり、見てみると自分でもできそうな気がしてくる。
新築、業者によるリフォーム・リノベーション、そしてDIY問わずよく出る話題として

「断熱材は何がいいのか」

その検討のための基礎知識に関する私的メモをまとめて公開する。

伝熱の3要素

断熱性能が一番いいのは何だという話の前に伝熱の基礎中の基礎について確認する。
伝熱は下記の3つに分類される。

熱伝導-同一物質内の熱移動
例えばマグカップと魔法瓶のポットに熱湯を注ぐ。
当然、マグカップはすぐに熱くなるが、魔法瓶の外側は熱くならない。
これはマグカップは熱伝導しやすく、魔法瓶は熱伝導しにくいと言える。
材料は独自の物性値「熱伝導率」を持ち、これは低いほうが優れている。

対流(熱伝達)-個体と流体間の熱移動
例えば暖められた部屋Aから寒い隣の部屋Bに扇風機で風を送ると部屋Bは暖かくなる。
これは暖かい空気という流体が移動して熱が移動したと言える。
対流には材料独自の物性値はではなく、流体の流れの状態から計算される。
扇風機の風量が変わればどれだけ部屋Bが暖められるかが変わることを想像してもらえればいい。

輻射-電磁波による熱移動
例えば焚き火をした時、火から離れた場所で空気が暖められたわけでもなくても、暖かさを感じる。
これは赤外線などの電磁波で熱が伝わるからだ。
よく遮熱材といって銀色シートがあったりするがそれは主にこの輻射を抑えるものになる。

断熱性能と言った時に上記のどれを指すのかで意味がぜんぜん異なるの要確認。
熱伝導率が優秀でも隙間風がびゅーびゅーで対流でガンガン冷気が入ってくるから意味がないとか、断熱性能で一括りにするのではなくそれぞれの性能、問題に分けて検討するのがベターだ。

熱伝導に関わる数値

断熱性能の中でも熱伝導に関する数値の意味と計算関係をまとめる。
わかり易さ重視で実用に必要な範囲と思われる内容にしている。

熱伝導率 λ(ラムダ)[W/mK]
材料固有の値。低いほうが優れている。
K:絶対温度 実用上は摂氏の℃で差し支えない。

材料厚さ d[m]
断熱材は厚いほど断熱性能が優れる。

熱抵抗 R[m2K/W]
計算式:R=材料厚さd/熱伝導率λ
熱抵抗Rの値が大きいほど優れている。
熱抵抗は足し算が可能。

例:厚さ50[mm]、熱伝導率0.036[W/mK]のスタイロフォームの熱抵抗は
R=0.05[m]/0.036[W/mK]=1.389[m2K/W]

熱伝導率0.036[W/mK]のスタイロフォームを厚さ50[mm]、厚さ100[mm]、熱伝導率0.050[W/mK]グラスウールを重ねた時の熱抵抗は
50mmスタイロの熱抵抗RS=1.389[m2K/W]
100mmグラスウールの熱抵抗RGW=0.1/0.050=2[m2K/W]
合計の熱抵抗R=RS+RGW=1.389+2=3.389[m2K/W]

熱貫流率 U[W/m2K]
計算式:U=1/R
熱抵抗Rの逆数。U値が小さいほど優れている。
単純に足し算はできない。

住宅の断熱性能でよく使われる。
U値:熱貫流率
UA値:外皮平均熱貫流率 住宅の平均熱貫流率(Average)
Uw値:窓のU値 ガラスとサッシの平均(Window)

対流に関わる数値

相当隙間面積 C値[cm2/m2]
C=隙間面積[cm2]/延床面積[m2]
床面積1m2あたりにどれだけの隙間cm2があるか、噛み砕いて言えばどれだけ隙間風が入るか。
正確な数値は計算では出すことができず、実測が必要。

現在の住宅では最低でもC値1以下を目指すべきと言われている。
高気密高断熱にこだわる住宅メーカー、工務店では0.3~0.5を掲げるところが多い印象。
逆に隙間風ビュービューの古家だと5以上10以上測定不可ということもままあるという。

C値が大きい家は冬場、屋外で風が吹けば隙間風でガンガン対流で室内が冷えていく。
ある程度断熱が良くて部屋の温度が高い → 隙間風が吹き込む場所がある → その部分が冷やされて結露が起きる。
などの弊害が挙げられる。

逆にいっそ無限隙間風&無断熱の古民家であればそもそもそこまで部屋が暖まらず、湿気もどんどん外部に出ていくので結露が起きにくいとも言える。
このように少し古い気密が不十分でちょっと断熱材が入っているような低気密、少し断熱住宅では結露が起きるリスクは無断熱古民家よりも大きい。
これを根拠に高気密高断熱を否定する方もいるが、そこは正しい知識で判断したいものだ。

断熱材の防風性能
特に数値があるわではないが、グラスウールのような繊維系の断熱材の場合、隙間風が多く吹く家の場合、断熱材の中を風が吹き抜けてしまい、対流による伝熱が生じる可能性がある。
スタイロフォームのような発泡系の断熱材は風が通り抜けることがないので対流による伝熱は生じない。
気流止めや防風層などの施工がしっかりしていれば単純に熱貫流率Uだけの差になる。

輻射に係わる数値

輻射は断熱材を選ぶにあたって特にフォーカスされることはないが、ざっくり屋根裏は夏暑いから天井の断熱材は厚くしようね程度の認識で事足りてしまう。
あとは、数値的なことは気にしないで黒の方が暑くて、白の方が涼しいよね程度の話になってしまうことが多いのです。
一応知識として。

シュテファン=ボルツマンの法則
E=εσT4

表面温度が高いほど、放射率の高い材質ほど放射エネルギーは大きくなる。
例:屋根瓦が夏に熱せられると屋根裏が非常に高温になる。
放射率が低い(=反射率が高い)材料や色を選ぶと夏場、熱くなりにくい。
例:黒より白Tシャツの方が夏涼しい。

放射エネルギー E [W/㎡]
上記のシュテファン=ボルツマンの法則の公式で計算される。

放射率 ε(0~1)
材料や色によって異なる。
低いほうが放射エネルギーは小さくなる。

ステファン・ボルツマン定数 σ[W/(㎡·K4)]
σ= 5.67×10-8(定数)

絶対温度 T [K][ケルビン]
物体の表面温度
T [K]=273 [℃] + 気温[℃]

まとめ

基本的には

断熱材を厚くする、又は熱伝導率λの低い材料を使って熱貫流率Uを下げて熱伝導による熱損失を防ぐ。
隙間を小さくしてC値を下げて対流による熱損失を防ぐ。

の2方面からのアプローチになる。
逆にどちらか一方だけでは断熱全体の効果が薄くなるとも言える。

ただ、単純に断熱性能と言われた時に何を指しているのか、によっては思ったより性能が出ないなんてこともあるので、基礎知識として知っておきたいと思う。


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