マニュアル車はいずこへ
「マニュアル車ではなけば車にあらず」というマニュアル車原理主義者もいなくはないが、時代はATやCVT全盛時代。
一般的乗用車はおろかハイエースやエブリイなどの商用車からもマニュアル車設定は姿を消しつつあり、何ならバスにもオートマ化の波は迫りつつある。
マニュアル車が欲しくても新車・中古車いずれでも選択肢がかなり限られる時代になった。
それでもマニュアル車は根強い人気がある。
一般に燃費がいい、踏み間違えによる急発進がしにくい、車重が軽い、故障リスクが少ない、エンジンブレーキが効きやすいなどのメリットが挙げられる。
そして、何より運転が楽しい。
キャンプしかりバーベキューしかり面倒くさいことは楽しいこと。それは贅沢なことだとも言える。
先述の通りマニュアルにはマニュアルのメリットがあるが、近年のオートマ車の技術進歩は著しい。
無段階変速のCVTはエンジンを最適な回転数に制御してくれるし、変速の幅も広い。
昔ながらのトルコンオートマも多段化に加えてロックアップ領域が拡大して以前のようなエネルギーロスは大きく改善された。
十二分に快適なドライブを実現している。
いずれにせよ、相対的にマニュアル車のメリットは少なくなる一方だ。
それでも健気にマニュアルの軽バンを乗り回す私。
次に買う車もなんとかマニュアル車を探し出したいなぁとか思って調べている時に気がついた不都合な真実とは。
マニュアル車はローギアード!?
マニュアル車のあまり知られていないデメリットとは、マニュアル車は同仕様の車のオートマ車に比べてローギアード、すなわち高速巡航時のエンジン回転数が高くなる傾向があるのだ。
当然ながらハイギヤード、すなわち高速巡航時でもエンジンの回転数を抑えられる方が燃費、静粛性ともに有利だ。
ある程度スピードが出てオートマ車のロックアップ領域に入ってしまえばミッション形式に依らず伝達ロスは基本的にゼロだ。つまり、ギア比がそのまま巡航時性能に直結する。
以下、車両の最高速のでるギアの比較の例をいくつか列挙する。
車両の選定は特に意味はない。
メーカー:スズキ
車種:エブリイワゴン ジョイポップターボ
型式:DA62W(2002年)
ミッション | 4AT | 5MT |
ギア比 | 0.696 | 0.815 |
ファイナル | 5.375 | 5.375 |
減速比 | 3.741 | 4.381 |
100km/h時の 回転数(min-1) | 3640 | 4260 |
60km/h時の 回転数(min-1) | 2190 | 2560 |
メーカー:トヨタ
車種:ハイエースバン ディーゼルターボ4WD
型式:200系1KD(6ATのみ1GD)
ミッション | 4AT | 6AT | 5MT |
ギア比 | 0.705 | 0.580 | 0.838 |
ファイナル | 4.100 | 4.100 | 3.909 |
減速比 | 2.891 | 2.378 | 3.276 |
100km/h時の 回転数(min-1) | 2214 | 1821 | 2509 |
60km/h時の 回転数(min-1) | 1328 | 1093 | 1505 |
メーカー:マツダ
車種:デミオ 1.3Lガソリンエンジン車
型式:DJ3FS
ミッション | 6AT | 5MT |
ギア比 | 0.594 | 0.717 |
ファイナル | 4.060 | 4.105 |
減速比 | 2.412 | 2.943 |
100km/h時の 回転数(min-1) | 2060 | 2510 |
60km/h時の 回転数(min-1) | 1230 | 1510 |
メーカー:スズキ
車種:スイフトスポーツ
型式:ZC33S
ミッション | 6AT | 6MT |
ギア比 | 0.672 | 0.794 |
ファイナル | 3.683 | 3.944 |
減速比 | 2.475 | 3.013 |
100km/h時の 回転数(min-1) | 2160 | 2740 |
60km/h時の 回転数(min-1) | 1300 | 1640 |
総じてマニュアル車の方が100km/hで500min-1程度回転数が高い。
スポーツカーの場合はギア比の間隔が狭いクロスミッションの方がスポーティーでありがたがられるのも分かるが、それ以外の場合はあまりありがたくない気がする。
運転感覚やトルコンによる効果など、メーカー側からすればなにか合理的な理由あってのことだろうが、高速走行が多い場合はちょっと気になってしまう。
唯一見つけたマニュアル車の方がいい車
何台か見た中でマニュアル車の方が巡航においても有利な車は一台だけだった。
それはみんな大好き富士重工謹製のスバル・サンバーだ。
メーカー:スバル
車種:サンバー
型式:TV1(2008年) NA車
ミッション | 3AT | 5MT |
ギア比 | 1.000 | 0.861 |
ファイナル | 4.588 | 6.500 |
減速比 | 4.588 | 5.597 |
100km/h時の 回転数(min-1) | 5910 | 5290 |
60km/h時の 回転数(min-1) | 3540 | 3180 |
恐らく日本最後の3AT車がこのサンバーになるのだが、3ATだったら5MTの方が巡航回転数でも勝てる。
それでも5MTでも100km/hで5000回転以上という驚異のギア比。
それ以外にもJB64ジムニーは100km/hで100min-1くらいと差が比較的小さかった。
他にも探せば差が小さかったり、逆転する車もあるかもしれない。
コメント欄で教えていただけると参考になります。
それもマニュアル車を愛してる?
かつてのオートマ車のデメリットは大きく改善されており、マニュアル車は物好きの道楽という側面が大きくなっているように感じる。
しかし、オートマ車がどんなに進歩してもクラッチを踏んで好きなギアを選択し気持ちよく走るマニュアル車の魅力が変わることはない。
何でも自動で合理的な世の中、あえて自分でやることを楽しめる心の余裕は大切にしたい。
でもなぁ、巡航時の回転数も気になるしなぁ。そもそも欲しい車にマニュアル設定がないぞ。などとブツブツ言いながらカタログを漁るのもまた一興。メリット、デメリットを天秤にかけて車を見るもの楽しいひと時だ。
マニュアル愛好者の明るい未来を願ってやまない。
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