鉄道グッズの権利を考える

鉄道

鉄道グッズを作りたい・・・けど鉄道会社に怒られない?

というわけで、電車とかバスとかのグッズを作りたいのだ。
個人の趣味という建前の同人という道もなくは無いのだが、今回は正攻法でグッズを商品化して売るという前提で考えている。

そこでちょっと気になるのが権利上の問題だ。
模型でもグッズでも「○○鉄道商品化許諾」とかよく書いてある。
これはやはりグッズを作るには親玉の許可が必要なのではないか。
そうなるとなんかお金を払わなければならないのか。

アマゾンより引用 https://amzn.asia/d/hIQCZyt

まず、お断りするとは私自身は法律や権利の専門家ではないが、商標・権利関係の専門家である弁理士、弁護士と相談する機会があったのでまとめてみたい。
なお、記事を見て各自の判断で何かを行った際、何らかの不利益が生じたとしても当方は責任を持たない。

商標

まずは「中身は知らなくてもなんか聞いたことある」「なんか商売やっている会社は権利ありそう」な商標から。

結論から言うと、関係有ることも無いこともある。

なぜなら、まず商標は商標登録されたもの以外は権利がない。
次に商標は商品や役務が区別されて登録される。
つまり、商標登録されいないもの、もしくは商標登録されていても指定役務と違う内容で商品を作る分には問題ない。

例えば「ブルートレイン」の場合「旅客車による輸送」という役務でJR東日本によって商標登録されている。
つまり、「旅客車による輸送」以外でブルートレインという名前を使っても何ら問題ない。
現実にブルートレインという名前の焼酎が商標登録されている。
JRが登録した「旅客車による輸送」の「ブルートレイン」、「焼酎」や他の方の登録した役務、商品に関係ない内容であれば「ブルートレイン」という名前を商品名に使ったり、更には商標登録しても全く問題ない。
ブルートレインという名前の鉛筆を作ったり、青い花の名前をブルートレインとして売り出したりしても他の人が商標登録さえしなければ関係ないのだ。

逆に言うと商標登録されていれば同じ役務で使用することはできない。
例えば「のぞみ」はかなり多岐にわたる内容でJR東海によって商標登録されている。
鉄道以外でも航空機や船舶による輸送、キーホルダーや記念カップ、時計、変わり種だと石鹸や洋服など幅は広い。
また、おもちゃではバンダイが商標登録していた。
つまり「のぞみ」の名を関した商品を作ること許諾なしには難しそうだ。
他にもヘッドマークや列車名、グランクラスのようなロゴは商標登録されているものが多いようだ。

なははヘッドマークごと登録されている

ちなみに商標権は更新をすれば永遠に権利が消えない。
10年ごとに更新があるため、継続の手続きを行わなければ権利は失効するが、更新をし続ければ100年以上前に登録された商標が現在でも有効ということもある。

意匠権

続いてこちらはあまり馴染みのない人も多そうな意匠権。
意匠権は商標権と同じく出願し登録されたものに対して権利が生じる。
また、商標同様に役務の指定がある。

商標と同様に仮に意匠登録されていても鉄道車両としてのみの登録であれば、そのデザインを利用したおもちゃやグッズを作ることの問題はない。
JR等の大手の鉄道会社の場合は鉄道車両としてだけではなく「電車おもちゃ」としての出願もあるので注意が必要だ。

意匠権は商標と異なり登録から20年(2020年4月1日以降の登録は25年)経つと権利が失効する。

商標・意匠の確認

上記の通り、商標権、意匠権は登録さえされていないければ問題ない。
意匠、商標の登録状況は特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
で検索が可能だ。

ものによっては検索の仕方で出て来ないものもある。
例えばE5新幹線の外観が意匠権の登録をされているのか調べる時は「E5系」や「新幹線」と検索しても出てこない。
「東日本旅客鉄道」で検索するとJR東日本が登録しているものが全部出てきて、そこから分類などで絞り込むと出てきたりする。

著作権

存在は誰もが知っている著作権。
あまり知らないとなんかこれに引っかかっているのでは?という気がするやつ。

著作権は商標権、意匠権と異なり特に登録はなくても権利が存在する。
一方で「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」という要件があり、基本的に電車のような工業デザインには著作権はないと言われる。

キャラクターが描かれたラッピング車両等はキャラクターや絵に対して著作権があるので、注意が必要があるが、一般的な鉄道車両や駅舎などは著作権の範囲外だ。
電車の写真を撮影して売ろうがイラストを描いて売ろうが撮影者や画家が鉄道会社の著作権を侵害するということはない。

先述のヘッドマークやロゴマークに関しては著作権が認められるものもあるので、勝手にヘッドマークをトレスしてグッズを作ることは著作権侵害にあたる可能性がある。

当然ながら電車や駅の写真やイラストは撮影者やイラストレータに著作権が生じる。

少し話は逸れるが、例えば焼き物の茶碗は陶芸家が作っていれば美術品とも言えるし、機械で量産していれば実用的な製品で美術品ではないといえる。
では、普通の人が趣味で作っていたら美術品?実用品?
手作業で作っているけど、たくさん作っていたら美術品?実用品?
というように曖昧な部分もある。
近年では有名デザイナーによる美術品とも言えるような列車はどうなるだろうと言われると・・・。
絶対大丈夫と言い切るのは心配になる。

弁護士法人 モノリス法律事務所の記事で下記の内容を見つけた

応用美術と美術工芸品との境界はあいまいであり、ニューヨーク近代美術館のように工業製品を展示している美術館も増えてきました。アーティストの制作の幅も広がりつつあります。

多量に生産し販売することを目的として制作した工業製品であることのみを理由に、美術の著作物であることを否定することには無理があるといえます

https://monolith-law.jp/corporate/industrial-products-copyright

基本的には工業デザインの著作権は認められないけど、美術と工業の曖昧な部分もあるよということで、本当に心配な場合は当事者間の協議や専門家の助言が必要かもしれない。

優良誤認

一つ注意が必要なのは、鉄道会社公式グッズと誤解されるような内容はよろしくない。
少なくとも鉄道会社等他社を語ってものを売ってはならない。

権利的にはOKでも

例えば電車の写真を撮ってクリアファイルを作り、販売するとする。

その商品役務(文房具)として商標登録も意匠登録もされていない。
撮影者として自身が著作権を持っている。あるいは撮影者の許諾を得ている。
その商品をみても製作者が写真の電車の鉄道会社や他の会社であると誤解されない。

と権利上は全く問題なければ、特に鉄道会社の許諾なく商品を販売したところで文句を言われる筋合いはない。
特に侵害された権利がなければ、文句を言う根拠も費用請求をする根拠もない。

とは言え、ビジネスマナー的にははどうだろう。
ひと声かけた方が無難ではないか。
あるいは今後許諾が必要な内容が出た時に容易に話が進むのではないか。

もう一つの問題はこちらも商標登録をしなかった場合、本家の鉄道会社が同じような商品を大規模に売り出してきた時に太刀打ちできなくなる可能性がある。

そうすると権利的には支障なくともお互いにコミュニケーションを取りながらWIN-WINになるような進め方がビジネスとしてはベターなのではないか。

まとめ

鉄道グッズを作る時に気をつけなければならない権利として

・商標権
・意匠権
・著作権

が挙げられる。

内容や鉄道会社の商標・意匠登録の状況によっては権利侵害にならずに商品を制作することも可能だ。
しかし、権利侵害にならない場合でもビジネスマナー的には一声掛ける方がベターに思える。

個人的にはこちらの規模が小さかったり個人の場合、地方私鉄など規模の小さい会社の方が声を掛けやすい気がする。
話が逸れるがJRの場合、専門のライセンス部門がある。そこは法人しか相手にしてくれないとのこと。
JRを題材になんか作りたい場合はまず法人を立ち上げるところから・・・。

必要に応じて弁理士、弁護士など権利関係に詳しい人の力を借りながら権利侵害をしないで「三方良し」なビジネスを心がけたい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました